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第3 主たる争点
ア 本件有期契約の令和元年5月1日以降の賃金の支払請求について
- 原告と被告は本件有期契約を連続して3回更新(甲62・3頁)しており,最後の更新は平成30年11月1日から平成31年4月末日までの6ヶ月間を期間とする本件有期契約(甲1の1,甲1の2)である。この事実は当事者間に争いがない(甲54・3頁,甲62・3頁)。
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- しかしながら,原告と被告の間の本件有期契約の自動更新及び令和元年5月1日以降の賃金の支払請求について,原告には「雇用継続への合理的期待が認められる場合には,解雇権の濫用の法理が類推され,契約期間の満了のみによって有期労働契約が当然に終了するものではないところ,本件労働契約の契約期間が満了した後,契約の更新があり得ないような特段の事情はないから,その後においても本件労働契約は継続している」と解することについて,「最後の更新後の本件労働契約の契約期間が満了した事実をしんしゃくせず,上記契約期間の満了により本件労働契約の終了の効果が発生するか否かを判断することなく」令和元年5月1日以降の賃金の支払請求を認容するのではなく,「これが更新されたか否か等について更に審理を尽く」さなければならない(最高裁判所平成30年(受)第755号令和元年11月7日第一小法廷判決)(甲79)と判事している。
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- したがって,本件有期契約は自動更新となっており,契約の更新がありえないような特段の事情がないか,「これが更新されたか否か等について」審理を尽くさなければならないと解される。本件有期契約の自動更新についてつぎで述べる。
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イ 本件有期契約の更新がありえないような特段の事情について
- 一方で,前記のとおり被告の主張する解雇理由その他の雇用契約を更新しない理由として被告は原告の無断欠勤(甲1の2・雇用契約の終結に関する事項・第5項)を主張するが,原告は無断欠勤(甲54・13頁)をしていない(甲74の7ないし15)。無断欠勤については,前記のとおり,一方で,4労働日以上欠勤した場合には,医師の診断書などこれを証する書類等の提出でやむを得ない理由として認める(甲56(乙1)・第31条・第2項)との定めがある,他方で,本件有期契約(甲1の2)には,「無断欠勤があった場合,懲戒規定(甲5)に基づき…」と定められている。したがって,原告は,就業規則及び周知された懲戒規定にしたがった適切な手続きがなされていない。
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- 他方で,当事者間に争いがない事実として,原告には雇用契約の契約更新等雇用継続への合理的期待が認められる場合に相当する事実について前述したとおりである。
- その事実とは,被告会社の教室長染矢氏及び所属長である京田伸幸氏は,原告に対して「大原さんは正社員みたいなものだから」と原告の所属長であり教室長の管理者でもある京田氏が勤務時間終了後から午前3時頃までに主催し,約15名の教室長らが参加する慰労懇親会に原告は何度か誘われ参加して,度々「正社員にならないか」,「将来は教室長になってほしい」等といわれていた。この事実は雇用契約の契約更新等雇用継続への合理的期待が認められる場合に相当する事実であり,この事実は当事者間に争いがない(甲54・3頁)。
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- さらに,原告は,職能給のランクでいう「プロ」の講義をする裏付けとして,被告会社の了承の下,平成30年7月頃まで某専門学校の非常勤講師を兼任し,「プロ」の講義もおこなっていた。他方原告に対して染矢氏は,「被告会社は『高等学校』を創設したばかりである等と既存の事業の業績も好調であるから,原告が被告会社の正社員に応募するなら,推薦するから,教室長になる等してひとつの業務に専念したらどうか」等と3回は説得をうけ,このような経緯で平成30年8月頃より被告会社の業務に専念することにした。
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- つぎの判例は,「雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方,上告人において被上告人につき上記の雇用継続基準を満たしていないものとして本件規定に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは,他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない。したがって,本件前記事実関係等の下においては,前記法の趣旨等に鑑み,上告人と被上告人との間に,嘱託雇用契約の終了後も本件規定に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり,その期限や賃金,労働時間等の労働条件については本件規定の定めに従うことになるものと解される(最高裁判所昭和45年(オ)第1175号同49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁,最高裁判所昭和56年(オ)第225号同61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁参照,最高裁判所平成23年(受)第1107号同24年11月29日第一小法廷判決)と判示している。
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したがって,上記判例を準用し,本件有期契約の満了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方,就業規則第4条に定められている,6ヶ月ごとの自動更新をしない事由を満たしているものとして雇用が終了したものとすることは,他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないものと解すべきである。したがって,本件事実関係等の下においては,原告と被告との間に,本件有期契約の満了後も当該本件有期契約及び当該就業規則に基づき,6ヶ月ごとの自動更新をおこない雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり,賃金,労働時間等の労働条件については本件有期契約規定の定めに従うことになるものと解すべきである。
(つづく)
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